なまけものーと。

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ETV特集 パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~の備忘録。陳建仁さん

ドラマも好きなドキュメンタリーも録画してはためてしまっています。

なかなか観れてないのですが、少し観たもので、大事そうと思ったものを備忘録として残しておきます。

 

 これまでは、ハラリさんやアタリさんダイアモンドさんの話をまとめました。

namakemonote.hatenablog.com

 

今回は、最近観た中でも特に感銘を受けた台湾のお話です。

放送は、6月21日でした。

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ETV特集パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~」

www.nhk.jp

残念ながら、再放送はないようですが、とても良い回で、消化!と思って観たはずがこちらも結局保存版になりました(^^;)

現在は、NHKオンデマンドなどから有料で動画を見ることができます。

までだそうです。

NHKオンデマンド | ETV特集 「パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~」

ETV特集 「パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~」 | バラエティ | GYAO!ストア

 「パンデミックが変える世界~台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年~」

 

このシリーズ(まだ全部は観れていませんが)が良いことはもちろんですが、聞き手の道傳さんが素晴らしく、的を射た質問やそういう角度でという切り替えし、さらにはすっきりするまとめなど、観ていてとても頭が整理されるようです。

 

2021.6追記

オードリータンさんすごいぞ!ブームみたいなのはやや落ち着いてきたようですが、相変わらず台湾はコロナの優等生という話は尽きません。

もちろん初めから今までにわたるコントロールがかなり効いて、さらにそこに適切な情報公開という側面が加わり、市民の方の信頼が得られたというのは事実だと思います。

ですが、先日ラジオを聴いていたら台湾には日本の『治安維持法』の様なものが現在も機能していて、そのため人々が情報を政府に取られることや監視という面でも抵抗感が他の国に比べて薄いんだという話を知りました。

これは知らない点だったので、ハッとしました。

 

日本でも、やみくもに台湾方式が~なんてことがかなり取り上げられていたので、知っている方は多くないのではないかと思います。

 

それらを差し引いても、良い点が多いとは思うものの、ほんの少し頭に入れておく必要があるのかなと思い追記しました。

 

イスラエルの話でもそうですが、情報を取られるということは監視されるということや統制される可能性があるということと一体であることは、戦時下だけの話ではありません。一様に素晴らしいことばかりではないことは慎重に見る必要がありそうです。

 

 

台湾の副総統をしていた陳建仁さんの話を中心にしたものでした。

特に言及していないものについては、この陳さんを主としてまとめたつもりです。

『』内は陳さんまたは前述の方の言葉です。

これは大体要約で私の解釈でのまとめです。

 

↓  ↓  ↓
SARSでとても苦い経験をした台湾。

私は今回これを観るまであまり知らなかったのですが、その様子が今回映像付きで詳しく説明されていました。

 

和平病院という場での急に始まった強制隔離の模様は、目を疑うものでした。

そして、人権や自由も奪い、沢山の方が命を落としていきます

 

感染者が特定されないため、もはや隔離された中の人々は感染しても仕方がないと見捨てられたように感じたろうなと思わざるをえない様子でした。

そこでの不安や精神に支障をきたすであろう状況を思うと、苦い経験というのはとても簡単すぎる言葉だと感じます。

 

IT大臣のオードリータンさんが有名になりましたが、とにかく情報発信を続けたこと、そして正確な情報を届けるために、時間を惜しまず市民から直に質問を受け付けるというやりとりを続けていたことは、本当にすごいことだと思います。

 

これはニュージーランドのアーダーン首相の会見や自宅からの公開質問の様子なども同じで、不安なときな正確な情報が何よりの薬になるだろうということと、偏見や差別なども減らせる要因だろうと思います。

 


しかしながら、今回も台湾では感染者として隔離された人々へは強制力のある対策がされていて、自宅を含む隔離を勝手に破った時間によってその罰金も異なるといいます。そして、その額も大変高額でした。

 

こうした、民主的な政治を行いながらも、強制力の伴う監視をすることには、プライバシーの侵害という問題が隣り合わせです。

 

それについては、3つの条件があると陳さんは言います。

 

『一つは、インフォームドコンセントがあること。つまり、当局が情報を追跡しその情報をしようすることに同意してもらうこと。

 

二つ目はプライバシーの保護と機密性個人情報は追跡するが公表は決してしないということ。

 

三つ目は、レストラン、ホテル、駅など、感染者がどこに移動しどこが危険なのかを全て伝えること。しかし、ここでも感染者が誰かと言う特定はされることはない。このやり方には賛否両論あると認め、だからこそ民主社会では市民の信頼を得ることがもっとも重要としました。

 

 

私はこの三つ目は、情報の機密性と矛盾があると思いましたし、とても気になりました。されども同時に、少数は見過ごされても、大方の同意や合意は確実に必要なのだろうとも思いました。

つまり、これくらいされても、許せるくらい、あるいは、それをされてもまだ自分達にはそれを上回るメリットがあるということかなというのが私の今の解釈です。

 


さらに驚くのは、これを可能にする台湾独自のデジタルフェンスという監視システムです。

 

当局はその権限で、基地局から計測する携帯電話の位置情報を知らせるもので、自宅から離れたり、電源を切っていると、違反者として通報されるといいます。

 


これについては市民の方もインタビューで、

民主主義とは矛盾しているとの声であったが、それでも民主主義のもとで多くの同意があったのなら実行も可能だろう』という、冷静な意見がありました。

 

そうだ、同意も民主的に取られているというのも大きな点だろうなとふと気が付きました。しかし、あんなに冷静に分析できるのは、素敵だなと惚れ惚れしました。

 

また、他の方は、『データの保管についても、一定期間で削除されるという保証を当局がしているから、それを市民も信じ、緊急的な対応を理解し支持しているのでは』と、こちらも大変冷静な分析で仰っていました。

 

もちろんこれは二人の意見であって、これはみんながみんなではないはずです。

ここで、何かの番組内で3月か4月頃の台湾で『マスクを買うのにIDが必要なんておかしい!買えないこともあるのは変だ!』と若い男性が語っていた場面を思い出しました。

 

外から見れば、配慮の行き届いたものであったとしても、中にいれば色んな不満も不都合もあるでしょう。

また、当たり前だがそれぞれ事情も違うし、見えている景色も違うことは忘れてはいけないなとも思います。

 


この監視システムを開発した人は、

『監視は全ての人ではなく、自宅隔離の人に限定し、期間も14日間だけで、その期間が過ぎれば全ての個人情報を削除する』とし、

『監視の精度よりも人権とプライバシーを守るため』といいます。

『そのために、精度の高いGPSではなく大まかな位置しか分からないようなシステム(あえてレベルを下げて行っている)を採用している』と説明がありました。

何よりも、削除とその期日を断言してくれるのは大きいことだと思います。

 

その担当者の方は、

『大規模な監視をしてプライバシーのない生活を強いている大国もあり、これはとてもひどいことだと思う』としました。

これにはきっと中国への意思があるのだろうと思います。

その同じ方が

『自分はいつでも誰かに監視されるのは嫌だから』

と言っていたのが印象的でした。

 

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単純かもしれないが、そういう当たり前の市民意識みたいなものは大事だろうなと思います。

国のために差し出せ!と言うよりも、自分たちは色んなものに守られて生活しているのに、それを盾に市民だけに犠牲を強いることは、ありますよね…身近にも。


しかし、そんな台湾でも第2波に備えて、今度はBluetooth(これは前の監視システムよりも遥かに精度が高いそう)で監視するようにすることになったといい、そのことでその情報の管理なども問題となったそうです。

 

この放送の時点では、未だに決まってないようで、当局とも民間企業とも違う第三者の中立で利害関係の持たない非営利組織に任せるというものとしていました。

(確か個人情報やネットのリテラシーの強いヨーロッパでもこういう非営利組織に預けるという例があったような気がします。お互いの妥協点というのでしょうか。)

 

しかしそれさえ、まともだと思うのは、完全に任せきりでも、政府は大丈夫だと言う安心感で覆われているわけではなく、きちんとこういう議論が出てくることだろうと思います。

これは本当に民主主義が根付いていると言えると思います。

 

日本ではともすれば言論統制の様な物言いで批判自体を問題視しますが、政府を批判できるということは、民主主義の大前提です。

 


また差別については、先述のSARSの時の和平病院での感染者がスーパー感染者と言われ、医療関係者や家族までもが差別されたという話がありました。

本当に人間の醜さは絶え間ないものですね…。

 

 

『何世紀も繰り返されてきた感染症と差別については、正確な知識や認識を身に付けることが大事として、思いやりが大切で、人々はそこから感染症を通して共感や感謝を学ぶことができる。そうすることで、より心が成熟し落ち着いた行動を取れるようになる。これは心理的な成長だ』と陳さんは語ります。

 

公衆衛生はエンパシーかという道傳さんからの質問には、

『その通り、共感とは連帯の心、互いを愛し面倒を見る。誰かに助けが必要なら私たちは助けることができるから、共感は感染症対策に必要不可欠な精神だとしました。

 

 

また、『人間の本質に善の心があると信じている』と語る様子には、とても人間味を感じます。

これは綺麗事にも感じませんでした。

 

きっと、見えないこと、切り捨てられるかもしれない純粋なことが、こういう危機にこそ生きてくるのだろうと思います。

それが信じられないのなら、ふんぞり返って我が国が一番と豪語するのなら、きっと国民や市民にも伝わりようもないなともしみじみ思いました。。

 


また別の政府の感染者対策の医師で専門家は、

『台湾での一人目の感染者が飛行機の中で自分は感染者だと名乗り出て、飛行機から降りてすぐに保護を受け病院に直行してくれた、その人の知識や善意は素晴らしい、集団感染を最小限に抑えるように貢献してくれた

感謝まで語っていたのには驚きました。

 

こういう意識を、公人が普通に発信してくれることの影響は計り知れません。

と同時に、なぜこれができないのかな…と悲しくなりました。


差別はいけないとうわべだけで言いつつも、夜の街と言ったり、感染者に向けて発する言葉の数々は排除し差別をしていることに他なりません

 

ずっと感染症が出だした冬から気になっていることは、お悔やみをのべたり、感染者にお見舞いをどれ程口にしてきただろうかということです。

 

毎日食い入るようにはニュースを見ることはないし、情報のデトックスを心がけてはいる私ですが、少なくとも1月から今までにこれらを政府から聞いたことはありません

自治体からも皆無です。マスコミもほとんど言わない。

人はただの数字となって久しいですが、それまでに思いを寄せたことがあったのかと思うのです。人でなしとはこれかなとも。

 


この台湾の感染症対策に当たった方々が揃えて言ったのは、

『今までは上手く行ったが、次は分からない。そして、新型コロナウイルスは消えると期待しないこと、それに向けて準備をしなくてはならない』ということでした。

 


人との距離を取らねばならないことについての話の流れで、質問で『ウイルスよりもクリエイティブにならないとということですか』と言った、道傳キャスターは今回も聞き手としてすごいなと感嘆します。

 

建仁さんは現在退任し研究者に戻り多額の退職金も辞退したといいます。

こういう職人気質というのか本当に研究畑というのか、普通になせるのはすごいことです。

 


研究者として、現実的な話をしながらも、希望は必ずあると明るい。

そして、『将来のどんな感染症にも人類はきっと対応していける。それが私の信念です。』とユーモアもあってか笑顔で答えながら、

『大切なのは人類の未来に誠意を持ち、愛情をもって助け合うこと。そして忍耐強く取り組むことだ。知恵をもって科学的な研究を進めること、そして慈愛の心で積極的に助け合うことです』と知恵と慈愛の大切さをときました。

 

話を聞いていると、本質は研究者なのだけれども、それを良い意味で忘れさせるくらいの情が溢れるリーダーだなと思いました。

ご本人のモットーである慈愛という言葉通りの方だと思います。

その素敵さに録画が消せなくなりました。


正しい知識とその土台にある民主主義は欠かせないものです。
専門家、特に政治に大きく関わっていた人が

『全ての市民に敬意を示し、信頼を寄せている』

と言ってのけるのは並大抵のことではないですが、本来こういうのが一番当たり前でなければそもそもダメなんだろうな…と思うと、同時にとても切なくなってしまいました。


こんな人がリーダーシップを発揮する政府って、本当に羨ましいな。